クルーズは西欧社会から始まった旅のかたちです。日本船でさえ客室はベットですし、トイレは洋式が完備されています。私たちが違和感なしに洋上の日々を楽しめるのは日本人の生活が西欧化したからでしょう。
ところが一つだけ外国人と異なる点があります。それは寝る前に湯船に浸かるという習慣。すべてのお客様とは言えませんが、多くの方は自宅で寝る前にお風呂に入るのではないでしょうか。しかし殆どの客船では現在バスタブ無しの客室が一般的です。お風呂に入らなくてもシャワー客室で快適に過ごす方法はないでしょうか。2回に分けて考えてみたいと思います。
シャワー客室が増えた

英国のラグジュアリー船社キュナードは上級客室をグリルクラスとよびバスタブを完備していました。しかし2024年、新造船クイーンアンから伝統が変わったのです。プリンセスグリルという上級客室もシャワーだけの客室になりました。当社だけではありません。多くの外国船でもバスタブ無しが標準となりつつあります。バスタブ付は日本船(障害者用を除く)やディズニー・クルーズ船(赤ちゃんの沐浴用)、ラグジュアリー船などの上級客室に限定されるのが現状です。
シャワー客室が増えた理由は幾つか考えられます。
・昨今はシャワーだけで済ませる人が多い
・寄港地が増え、のんびりする終日航海日が減った
・シャワーだけなら船社は客室数を増やせる
たとえ短いクルーズでも快適に過ごしたいもの。私はシャワーだけで3か月もの世界一周クルーズを何度も経験しました。以下のような工夫も可能です。温&冷シャワーとエクササイズを合体させた方法をご紹介しましょう。
まずは温水シャワーで筋トレ

理想は朝晩2回浴びることですが、無理なら寝る前に。熱めの温度で温水シャワーを浴びながら自分なりのエクササイズをします。回数や時間は決めずラクにやりましょう。出来るだけ手摺りにつかまるのがポイントです。グラッと揺れたり、滑ることがありますので。例えばこんな運動はいかがですか。
・首回し、耳を揉む、肩の上げ下げ&グルグル回し
・ばんざい体操、グーパー運動、腕を上げ下げ
・スクワット、腿上げ、かかと落とし、つま先立ち
・膝の屈伸、足踏み
・好きな歌を歌ったり、ハミングして楽しく
体の上方部分から下方に向けて行うようにすれば動作を覚えなくてもよいでしょう。体を洗ってから直ぐ出てしまうと体はあまり温まりません。上記を急がずにのんびり行えば、少なくても数分はかかります。そして次はいよいよ冷水シャワーに挑戦です。
冷水シャワーで血管のストレッチを

筋トレで筋肉を増やせば血行が良くなり、体温も上がるとか。同様に体じゅうにある血管を鍛えれば新陳代謝が高まって体調も整うそうです。コールドシャワーが注目され出したのは手軽に試せるから。冷水で血管がまず収縮し、その後拡張するので血液の循環が活発になって免疫機能も向上していきます。
しかしながら、慣れていないのに冷水を浴びたら心臓麻痺を起こしかねません。安全に行うため私は「なんちゃって方式」を考案しました。体の一部分に数秒間だけ冷水をかけるというもの。最も冷えを感じる体幹を避けるのでショックにはならないはず。これなら誰でも体験できると思います。
やれば分かりますが、たとえ数秒でも「ひやっ」と感じますから、十分な刺激になっているはずです。まずは前述の温水シャワー&運動から開始。次に、手摺りに捉まりながら、以下をお試し下さい。
・温かめの冷水シャワーで始めること
・最初はシャワーに向かって正面を向く
<手と腕>
・右手に数秒間だけ冷水をかけ、次は左手も同様に
・右腕(肘くらいまで)、次に左腕
・(できれば)右の肩ぐらいまで、次に左肩も
<足>
・右のつま先だけ数秒間、同様に左のつま先も
・さらに右の膝ぐらいまで数秒間、同様に左側も
・次に後ろ向きになります
<お尻>
・右の「ほっぺ」に数秒間の冷水、同様に左側も
・これを数回繰り返す
以上が、冷水シャワー法です。
もちろん慣れている方は体幹に浴びても構いません。
温冷浴のポイントは上記を繰り返すことにあります。
すなわち時間と体調が許す範囲内で、温水&冷水を何度か繰り返して体を温めていくのです。時間的に余裕がある就寝前がベストかもしれませんね。温水だけよりも、私は温まって寝ることができました。
<最後に>
カジュアル船からラグジュアリー船まで、客船の種類は多く客室に備えられている装備も異なります。たとえ小さめのシャワー客室でもバスローブを支給してくれる客船も。なければ係に聞いてみましょう。ちょっと肌寒い時に羽織ったり下船前夜はパジャマの代用にもなり重宝します。