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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記

客船のピアノ物語

2025.11.05
クルーズエッセイ

どの客船にも置かれている楽器といえばおそらくピアノではないでしょうか。

日本人のピアノ人口は2百万人にもなるそうです。街角や駅などに置かれ上手に弾いている人を見かけることもありますね。

クルーズではあまり目立たない存在ですが、今回はピアノについてのトリビアをご紹介しましょう。

船旅とピアノの長い歴史

飛鳥Ⅱのピアノラウンジ 撮影:吉田あやこ

映画の「タイタニック」をご覧になりましたか。日曜日になると上級客室の乗客はキリスト教の礼拝に集まっていました。そこでピアノの伴奏に合わせ讃美歌を歌うシーンがあったはずです。1914年という昔のオーシャンライナーの時代から5台ものピアノを、あのタイタニック号はのせていたとか。

私は何度か英国船で世界一周クルーズをしました。やはり毎週日曜日の朝に礼拝があり乗客はシアターに集合したものです。そこで船専属のピアニストが讃美歌の伴奏をしてくれました。陸上の教会ですと生演奏ではなく録音テープに合わせて讃美歌斉唱をする場合もあります。しかし船上ではピアニストが数人乗船していますから、いつも「ライブ」でした。

時は変わり今のクルーズ客船にはピアノラウンジなどが設置され、ランチ前のひと時やディナー直前のカクテルタイムなどで静かな演奏が楽しめます。この時はホテルのロビーなどと同様に演奏のみで、歌はなし。そして食後にはバーなどで弾き語りや、居酒屋風のパブでは乗客のリクエストに応えて一緒に歌うという余興がクルーズの夜を彩ってくれます。バイオリンやハープなどより馴染み深い楽器ですし、応用範囲が広いピアノは現在も客船でも欠かせない存在といえます。

さまざまな場面で活躍するピアノ

オイローパ2の命名式 撮影:吉田あやこ

命名式という式典の前に登場したこともあります。

写真は2013年5月、ドイツ客船オイローパ2の場合でした。ブラック&ホワイトの美しいグランドピアノは世界最高峰と評判のスタンウェイ&サンズ社のものです。同社はドイツのハンブルグが本拠地で、オイローパ2という世界でトップクラスの客船の船社ハパグロイド・クルーズ本社も当地なので、両社は互いによい宣伝になったはずです。本船には特注されたグレーカラーのミニ・グランドピアノが搭載されていました。

エクスプローラI船上にて 撮影:吉田あやこ

またMSCクルーズの上級ブランドとして2023年に就航したエクスプローラーⅠもスタンウェイ&サンズ社のミニ・グランドピアノを採用しています。しかしオイローパ2と異なるのは自動演奏装置付きであるところ。鍵盤の下にスイッチがあり、自動とピアニスト用のマニュアル・モードが選べるようになっていました。

かつて私が業務乗船していた頃、ピアノに関するこんなエピソードがあります。朝食前に船内を散歩すると、しばしば静かなピアノ演奏が聴けたのです。それはピアノ好きの乗客や、クルーのピアニストによる「朝練」でした。邪魔にならない時間を選んで鍵盤に向かっていたのです。「たとえ5分でも毎日指を動かしたい」と日本人のお客様は仰ってました。クルーの場合も同じでしょうね。コンサートなどに出演する著名なゲストピアニストならばリハーサルが出来るでしょうがバンドのピアニストたちは公室にあるピアノを利用していたのです。

蛇足ですが、タイタニック号のピアノ5代は全てスタンウェイ&サンズ社製でした。アイルランドの造船所だったので、ドイツから運ばれたのでしょう。しかし今は客船とピアノメーカーの関係に少し変化が出ています。

世界でYAMAHAが愛される理由

クイーンアンのミニグランド 撮影:吉田あやこ

客船のピアノはほぼ2分されているようですね。前述スタンウェイ&サンズ製とヤマハ製。造船所はイタリアやドイツ、フランスなどの欧州に多く存在するため、完成後は搬入に便利なドイツ製のピアノが選ばれるだろう、と考えても不思議はありません。

ところが静岡県の掛川工場が本拠地になるヤマハのピアノをのせる客船がとても多くなっています。例を挙げてみました。造船所は全てイタリアです。

 

・英国船 クイーン・アン

・ドイツ船 マインシフ・リラックス

・北欧船 バイキング・エデン

 

2025年2月までヤマハはインドネシアに工場があり、ミニ・グランドを製造していました。欧州の造船所へ輸送するには日本製より早く安く運べたことでしょう。それにしても日本製が選ばれたのはなぜでしょうか。ヤマハのピアノには他社にはない大きな利点があったのです。

「船の揺れにとても強くメンテナンスしやすい。だから我が社では全てヤマハ製にしているのです。」

と教えてくれたのはクイーンエリザベスでお馴染みの英国キュナードの本社で働くエンターテイメント担当者でした。入港中、船内のピアノが調弦されているのを見たことはありませんか。陸上のホテルと異なり、洋上では頻繁に調弦が必要とのこと。日本人として誇らしく思えるピアノ自慢のお話です。

*最後に

新造船飛鳥Ⅲは2025年7月20日にデビュー。

ドイツの造船所から回航され6月2日、母港横浜に到着しました。もちろん!ここでヤマハのピアノが搬入されたそうです。船内のどこに、何台が?今後美しい音色で私達を楽しませてくれることでしょう。

執筆者 | 吉田あやこ
クイーン・エリザベス2と初代飛鳥元クルー、現職はクルーズアンバサダー。
クルーズバケーション社のコーディネーターを経て現職。英国在住30年以上。
クルーズガイド取材アシスタントなどを含め、世界の客船約100隻に35年以上の乗船経験あり。
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